2012年7月17日火曜日

日本一簡単な為替予約の話

こないだタイトルに「宇宙一」を使ってしまって、それ以上だともう多次元世界に頼るしかなく意味不明なので「日本一」に縮小することとしました。と言うわけで今回はデリバティブ取引の話。特に為替のヘッジ会計についてです。デリバティブはファイナンスの分野なので、アカウンティング一筋で勉強してきた人には理解がけっこう厳しいんじゃないかと思います。なのでそもそもデリバティブって何よ的な、ざっくりかみ砕いたところから説明しましょう。


デリバティブの代表格が「先物」ってやつです。僕が子どもの頃はよく「先物にだけは手を出すな」と言われたもんです。ハイリスク・ハイリターンな金融商品というイメージが強いのでしょう。実際、先物取引で一儲けしようとして人生棒に振った人もいると思います。人生、なんだかんだでこつこつ働いてお金貯めるのが一番ですね。

でもこの先物取引、実は企業が安定的に製品を作って売り出す上で、とても重要なものなのです。例えば農産物はその年によって豊作だったり不作だったりして、価格が動いてしまいます。でも企業はまず予算を立てて、全ての生産活動を計画しなければなりません。もし原材料価格が高騰なんてことになったら大変ですよね。予定した量の製品がつくれなくなってしまいます。そんな時に役立つのが先物取引。未来の価格を先に決めてしまうことで、価格の変動リスクを回避しようというわけです。逆に原材料価格が下がった場合には、無駄に高い額で仕入れることになるわけで、そのへんを許容出来るか否かも考えどころですね。ちなみに大阪堂島の米市場で行われた米先物取引は、世界で最初のデリバティブ取引だと言われています。



ではこれを踏まえて、為替の話をしましょう。昨今は円高で輸出企業が大変だと言われていますね。円高とか円安とか、きちんと理解しておかないと簿記1級合格は難しそうです。1ドル100円が110円になったら円安、90円になったら円高です。上がったら安くて下がったら高い、というあべこべの説明をされると混乱しちゃいませんか? これは見方を変えれば簡単に理解できます。為替のことは忘れてネギの話をしましょう。ネギ100円が110円になったら、ネギが高くなってますよね。ネギ高です。逆に90円になってたらネギは安いということですね。ネギ安です。じゃあ同じように1ドル100円が110円になった場合、これはドル高(つまり円安)ですね。逆に90円になった場合はドル安(つまり円高)となりますね。ドルという商品があって、それが高くなったのか安くなったのかを考えれば、円高と円安はおのずと導けるわけです。


為替は変動します。これも企業にとっては計画を立てる上で気にしないといけない問題ですね。また1ドル100円の状態を考えてみましょう。この状態で10ドル払ってネギをアメリカから輸入すると考えてみましょう。円換算すると1000円。これなら予算は1000円で良さそうに見えます。でももし実際に輸入する時、為替レートが1ドル110円(円安)になっていたとしたら……。1000円のつもりが1100円、100円多く払うことになってしまいました。この差額を為替差損益と言います。図にするとこんな感じ。(直物為替レートというのは、通常の為替レートのことです)


こんな風に取引に際して為替変動リスクなんてものがあると、なかなか計画が立てにくいですよね。どのくらい為替が動くのかとか予測しながら商売するのは大変です。そこで登場したのがヘッジ取引です。教科書によると「価格変動、金利変動および為替変動といった、相場変動などによる損失の可能性を減殺することを目的として、デリバティブ取引をヘッジ手段として用いる取引」とのことです。要するにデリバティブを使ってリスクを減らしましょう、ということですね。ヘッジは「防ぐ」という意味です。

さて、今回は為替の話ですが、この為替変動リスクを減らす取引が為替予約。先に将来時点の為替レートを決めてしまいましょう、ということです。上記の例で、もし予約レート(先物為替レート)を1ドル101円と定められていたらどうでしょう。


1ドル10円安のところを1ドル1円安にまで抑えることができました。なので100円多めに払わなければならなかったところ、10円で済ませることが出来たのです。仕訳はこんな感じです。


この例のように最初からヘッジ取引をしていれば簡単なのですが、問題となるのは「取引発生後に為替予約を付した場合」 ちょっと様子見てたら思いのほか円安になってきたので、慌ててヘッジ取引しておきました的な流れです(笑)


取引日時点の直物為替レートと現時点の直物為替レート、その差額を「直々差額(じきじきさがく)」と言います。そして現時点の直物為替レートと決済日の予約レート(先物為替レート)の差額は「直先差額(じかさきさがく)」です。上記の例を引き継ぐと、まず取引日においては1000円の出費で済むだろうと考えてます。でも今ここにきて、為替レートが1ドル100円から105円に。1050円の出費となります。もしこのまま円安傾向が続いて、決済日に110円なんてことになったらどうしよう……。そう思ったので、リスクを少しでも減らそうと先物為替レート1ドル108円という為替予約を行ったのです。これで最終的な出費は1080円で抑えることが出来ました。仕訳を見てみましょう。


仕訳の書き方は、まず最初に取引日と決済日の比較をすることです。決済日におけるレートが最終的な損益になるので、まずはそこを把握します。続いて直々差額を為替差損益として反対側に仕訳します。そして最後、直先差額を前払費用(前受収益)として余ったところに放り込みます。最後、決済日時点で買掛金分を支払えば取引は完了となります。分かりやすく、現金預金で支払ったということにしておきます。


この場合、もし決済日時点で為替レートが1ドル110円であったら、20円は損失を防げたということですね。でももし逆に1ドル90円になっていたとしたらどうでしょう。180円余分に支払ったということで、大損となってしまいました。これがヘッジ取引の悩ましいところです。あと一点。簿記1級の教科書だと、かなり都合のいい予約レート(先物為替レート)が提示されていたりしますが、現実には直物為替レートと相場の動き等から計算されるので、好き勝手なレートで予約するなんてことは出来ません。教科書の数字はあくまで計算を簡単にし、理解を優先したものと心得ておきましょう。


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