2012年8月26日日曜日

2050年 シミュレーションと総合戦略(1)

「グローバルJAPAN -2050年 シミュレーションと総合戦略-」
http://www.21ppi.org/pdf/thesis/120416.pdf

 21世紀政策研究所の報告書「グローバルJAPAN -2050年 シミュレーションと総合戦略-」を読了しました。日本の経済、社会について考える上では必読の書と言っても過言ではないでしょう。本資料の中心は「提言」であり、単なる「分析」ではありません。分析を通して今後の展望を切り開く、重要な示唆に富んだ資料です。

 まずこのシミュレーションには欠陥があるという前提を話しておきます。それは日本のシナリオが他国に連動していないということです。日本においては「生産性が先進国並みに上昇」「現状維持」「財政悪化による成長率下振れ」「労働力改善(女性や老人の活用)」の四つのシナリオを想定しています。そして海外では「新興国悲観(新興国が経済を先進国型に移行できない)」「欧州悲観(財政危機からの脱却が出来ない)」といったシナリオが組み込まれています。とは言えこれらは有機的に反応することもなく、独立的に検討されています。またそれ以外にも為替の動きを購買力平価で予想するなど、現実の動きとは解離した情報で予想を立てています。ただし、こうした欠陥それ自体を批判することはそれほど重要ではありません。そもそも2050年の予測であり、ある程度おおざっぱになってしまうのは当たり前のことです。要はどの程度のブレを許容出来るかということ。遠くを目指して旅するとき、おおまかな方向さえ合っていればいいのと同じことです。

 おおまかな方向で良い、とは言えこれはさすがに変じゃないかと思う部分も出てきます。例えば、韓国とフィンランドの異常な飛躍です。

 
 これは日本経済が「現状維持」となった場合における、一人当たりGDPの動きです。日本はだいたい横ばいのままとなっており、その周囲で変動が起きています。その中で韓国とフィンランドの伸びが異常に目立っているのです。これはどういうことなんでしょうか。
 本資料から読み取れる情報では、韓国の伸びはおそらくアジアにおける競争力の高さを要因としているものと思われます。資料全体を通して、これからはアジアの世紀となることが強調されています。人口増加のメリットを発揮し、中国だけでなく、インドやインドネシアなどが勢力を伸ばす見込みです。その上で東南アジアでマーケットのシェアを高めることに先んじた韓国企業は、アジアの成長による恩恵を大いに受けるものと思われます。
 ただし、韓国は無視出来ない問題をいくつも抱えています。北朝鮮や韓国企業のダンピング問題。さらに日本よりも急速な高齢化問題(日本の方が先ですが、伸び率は非常に高いのです)。そうした影響を一切考慮から除外し、よほどの幸運に恵まれての飛躍としか思えません。それとフィンランドについての情報は一切ありませんでした。これほどの伸び率を記載しながら、何の説明も無いのは不自然な気さえします。僕はこの研究報告書を日本経済の指標として価値あるものと思いますが、世界経済の見通しとしては雑すぎると感じます。

 日本財政シミュレーションは非常にシンプルな計算で書かれているため、説得力があります。まずシミュレーションには現在の政府方針を土台とします。①「2015年度までに消費税率を10%に段階的に引き上げる」、②「2020年度までにプライマリーバランス(基礎的財政収支)を黒字化、その後の債務残高をGDP比で安定的に引き下げる」ことです。
 例えば単純に消費税率を10%にし、収支そのままに過ごしていたとしても、財政の悪化は止まりません。

 2050年時点での政府債務残高は対GDP比594.6%。ここにたどり着く前に間違いなく破綻するでしょう。現在と同水準を保つには2016年度以降10年間にわたり毎年GDP比1%の収支改善が必要。これは要するに、2016年から2026年にかけて、毎年5兆円の収支改善をしなければダメだということです。
 財政健全化には消費税増税と収支改善が必須。これが本資料の基本スタンスです。そこに加えて外国からの投資を呼び込むことが、一つの狙いとされています。

 次回は本資料の中核でもある、「提言」の内容についてまとめていきたいと思います。

2050年 シミュレーションと総合戦略(1)
2050年 シミュレーションと総合戦略(2)
2050年 シミュレーションと総合戦略(3)

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