2012年8月26日日曜日

2050年 シミュレーションと総合戦略(2)

「グローバルJAPAN -2050年 シミュレーションと総合戦略-」
http://www.21ppi.org/pdf/thesis/120416.pdf

 前回の日記に続いて今回は肝心の「提言」についてまとめます。論点は大きく分けて四つ。「人材」「経済・産業」「税・財政・社会保障」「外交・安全保障」です。その中の「外交・安全保障」については僕の日記では触れないこととします。と言うのも、本資料における「外交・安全保障」は、結局のところ「経済・産業」の絡みで達成される秩序を中心に据えて論じられているからです。ゆえに「経済・産業」についての考え方を知っておけば、事足りると判断しました。

「人材」「経済・産業」「税・財政・社会保障」「外交・安全保障」という順序に、本資料の思想が透けて見えます。つまり第一に考えるべきは人材。この精神が最も重要なのです。人材あってこその経済発展、産業振興。さらに「税」「財政」「社会保障」などと三つに分けず、「税・財政・社会保障」一体で論じている点が素晴らしい。世の新聞やそれに群がるコメンテーターたちは各論にばかり終始するきらいがあります。税のみを論じ、消費税増税に賛成だの反対だの言っているようでは、議論がまったく深まりません。その点において本資料は優れている、いえ普通だと言えるでしょう。そして経済をより良いものにすることが、外交力を高め、安全保障を築いていく。これこそが本資料の骨子であり、思想なのです。

■人材

 人材における重要なポイントは二つです。まずは、足りなくなる労働力をいかに確保するか。それとこれからの人材をどのように育てるか。当たり前のことですが、何か一つやれば全てがうまくいく、といったようなお花畑の議論は存在しません。これは僕個人として繰り返し言いたいことですが、一つのことだけを見てああでもないこうでもないと騒ぐのはナンセンスです。

 まず労働力確保の視点では、三種類の労働者が考えられます。それは女性、老人、外国人です。特に女性の労働力確保については、シミュレーションシナリオの一つに組み込まれており、重視されています。「女性の労働力確保のシナリオを設定しても、女性が働きやすい環境が出来ていないのだから無駄だ」と本資料を批判する意見を見かけましたが、当然ながら本資料においても環境づくりは重視されています。女性の労働力を増やすべく、オランダの「短時間正社員」制度を参考にすべきというのが目立った主張です。これは雇用者の希望で短時間とフルタイムを選択できる仕組みであり、パートよりも女性の社会進出のために効果的な仕組みだと思われます。加えて従来言われてきている保育支援、男性の育児・介護休暇取得支援についてコメントされています。

 老人の労働力を活用すべきという点については、あまり具体的に論じられてはいませんでした。定年の時期を産業界が伸ばせばいいと単純に考えているのかもしれません。それから多くの人が心配している外国人受け入れについては「受け入れ基準の透明化」を急ぐべきだという意見があります。これは確かにその通りで、外国人を受け入れるにしても実際どういう人間が来るのかが重要です。保守派の反発は外国人犯罪者の増加、ならびに日本人の雇用を奪うという部分が中心です。であればその反発を和らげるレベルの基準が必要です。

 これからの人材をどのように育てるか。その前に、そもそも産業界はどのような人材を欲しているかが示されています。就職活動をする学生には是非知ってもらいたい内容です。

①イノベーションを生み出す「個性」と「異端」の資質を備えていること
②消費者の感動や笑顔を生む「感性」を持つこと
③「柔軟な発想」と「自ら考える力」、そして「強い心(タフネス)」を持つこと

 これら三つをバランスよく養っていくことが人材の育成で最も重要なことだと考えられます。これを踏まえて、グローバルな人材についても、単に語学力があればいいというわけではないことを論じています。グローバル人材に必要なのは「論理力」「伝える力」「広い視野」「許容力」であると言います。ちなみに僕がこの中で最も必要だろうと思うのは「伝える力」です。これが無いと、他者とのコミュニケーションが成り立ちません。

 本資料では、若者は決して「内向き志向」ではなく、留学者数は過去に比べて増加しているという点を正しく押さえています。マスコミは不安を煽りたいのか若者批判をしたいのか、「留学者数が減っている」「若者は内向き志向だ」と繰り返していますが、データに基づかないただの嘘です。過去のデータから将来を見る際には人の見方が大きく影響しますが、過去のデータそのものの分析において本資料は大きく間違っていないと思います。

 人材育成の最後に学校教育についても言及しています。本資料では「教育のあり方を一部の教育専門家に任せるのではなく、様々な利害関係者(親、産業界、塾産業など)の切実な声が反映される仕組みを作るべき」とし、教育というものを幅広く見るべきだとしています。


 次回は最後。「提言」の内の、「経済・産業」「税・財政・社会保障」についてまとめます。

2050年 シミュレーションと総合戦略(1)
2050年 シミュレーションと総合戦略(2)
2050年 シミュレーションと総合戦略(3)

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