2012年8月28日火曜日

証券アナリスト試験におけるIFRS

 IFRSは「アイエフアールエス」とか「アイファース」「イファース(米国や英国ではこれが主流?)」って呼ぶのですが、ヨーロッパで生まれた会計基準のことです。正式にはInternational Financial Reporting Standardsで、日本語では国際財務報告基準と言います。一般だとひとつ前のIAS(International Accounting Standards)の和訳で、国際会計基準の方が広まってますね。IFRSのことを「国際会計基準」と言っても通じますし、日本国内であればそれでも問題なさそうだなと思います。

 IFRSは証券アナリストの試験においてもかなり重視されています。その理由は、証券アナリスト協会のレポートです。

投資家から見たIFRS」PDF
平成24年4月17日 公益社団法人日本証券アナリスト協会会長 稲野和利

 このレポートの中には「IFRSを支持する理由」という論点が出されていて、IFRSに対する注目度が高いことが伝わってきます。TACの証券アナリスト二次(企業分析)の教科書、第3章の会計制度は情報量が多い割に重要度がとても低いのです。項目としては「連結会計」「合併・買収」「会社分割」「外貨換算会計」「税効果会計」「デリバティブとヘッジ会計」「新株予約権」「退職給付会計」「米国基準とIFRS」と色々並んでいますが、そのほとんどが近年出題されていません。特に平成23年(2011年)の出題は「国際財務報告基準(IFRS)に準拠して作成された連結財務諸表」というもので、完全にIFRS寄りの内容となっています。レポートや試験の傾向から見るに、証券アナリスト協会がIFRSを重視しているのは間違いありません。

 ここで大事なのは、そもそもIFRSと日本の会計ってどんな違いがあるのか、ということでしょう。それ自体が膨大な情報ですから、たぶん異なる部分はかなり多いと思いますが、証券アナリストの教科書では4つのポイントに絞られています。

①IFRSでは固定資産の評価に“再評価モデル”を使ってもOK

 日本の基準だと、固定資産は“原価モデル”で計上されます。これは買った時の費用をそのまま載せるという手法です。でも時間が経って固定資産の価値が減ることもありますよね。そんな時はその分だけ減損会計を行うわけです。

 それに対して再評価モデルというのは、「再評価実施日における公正価値から、その後の減価償却累計額及びその後の減損損失類型学を控除した評価額で計上する方法」となります。要するに固定資産の価格が上がったり下がったりした場合は、それを使って帳簿記入しますよ、ということです。この再評価モデルは自由度が高く、任意で使えます。IFRSにおいても、日本基準と同じ原価モデルだけを使用することが出来ます。また、土地や建物だけ再評価モデルで、他の固定資産は原価モデルといった使い分けも可能みたいです。

 原価モデルでは損失のみ認められていましたが、再評価モデルでは価格が上がることも考慮され、損失と利益の両方が認められています。利益が出た場合の仕分け項目は「再評価剰余金」で資本に累積します。損失が出た場合は「損失(費用)」もしくは「再評価剰余金」の取り崩し(優先)となるのです。

②IFRSでは研究費と開発費は別腹です

 TACの教科書には「(日本基準では)研究費と開発費は、共に費用計上される」と書いてあります。ちょっと調べるとどうもこのへん、色々と議論の余地があるようで、危うく深みにはまるところでした(汗) そういうのはまた別の機会に勉強することとして、今は試験に集中しなければいけませんね。日本の基準では研究費と開発費はまとめて「研究開発費」です。上記のとおり、費用として計上されます。

 それに対してIFRSでは研究費と開発費が別々に存在します。まず研究費は発生した時点で費用確定。しかし開発費は「一定の要件を満たす」と資産に計上されるのです。その条件が何なのかは教科書に載っていませんでしたが、ここにざっと並べてご紹介しましょう。

・実用化できるだけの技術上の可能性がある
・実用化しようとする意図がある
・実用化する能力がある
・製品やサービスに対する一定規模の需要を見込んでいる
・営業体制や販売のノウハウがある
・実用化のための支出を合理的に把握して提示できる

 つまり、実際に製品化につながる開発であれば、資産として認めてもいいよってことなのです。ここが研究費と開発費を分けるポイントですね。研究費は実用化につながらないもの、開発費は実用化につながるもの、くらいアバウトに理解しておけば試験対策としては十分だろうと思います。

③リースは「経済的な実質」に沿って

 ここは教科書でも説明の少ないところで、それほど重要でもなさそうなのでさらっとだけ。日本基準では例えばフルペイアウトやノンキャンセラブルといった契約に「現在価値基準」や「経済的耐用年数基準」といった数値基準があります。IFRSではそうした基準を設けず「経済的な実質」を重視するとしています。実態としては各自基準を設けないと仕事にならないでしょうから、この部分が日本に与える影響はそれほど大きくないのかなという印象です。

④違いがあまり見えてこない「退職給付会計」

 TACの教科書では、日本基準だと遅延認識だけで、IFRSなら遅延認識でも即時認識でもOKみたいに書かれています。でも実際には日本基準でも即時認識が使えるようで、ちょっとよく分かりません。ちなみに遅延認識とは「数理計算上の差異」を一定の期間をかけて徐々に認識すること。対して即時認識というのは「数理計算上の差異」を即時認識することで、まあそのまんまの意味です。あと「数理計算」ってのは、例えば保険なんかで死亡率やら事故率やらを使って適正価格を引き出すとっても難しい計算の話。これの「差異」をどのタイミングでBSに載せますかという話です。

 退職給付会計において日本基準とIFRSとで決定的に違うのが、回廊方式の採用です。日本基準では採用されておらず、IFRSでは認められています。回廊方式とは「会計上の数理計算上の差異については、その額が上下一定範囲内でとどまっている間は費用処理を行わないとする方式」のこと。差異があっても許容範囲であれば放置する、遅延認識の一種です。しかし、ここまで細かい話が会計士ならまだしも証券アナリストで出るとは思えないなあ。


 こうした違いと、「包括利益」の概念について押さえておけば、IFRSはとりあえず対応できるんじゃないでしょうか。てか重要性で言えば上記の相違点なんかより、包括利益を理解することの方が先決かも。もしIFRSに興味を持って、試験対策以上に勉強したいという方がいたら、以下のサイトがおすすめです。読み物として面白い記事が揃っています。
IFRSフォーラム

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