2013年5月5日日曜日

限定責任信託と責任財産限定特約の関係(信託実務3級)

試験の難易度は低いけれど内容の理解は難しい。信託実務3級はそんな試験なんだろうなと思います。限定責任信託と責任財産限定特約に関する問題を見て、そう感じました。2012年試験の第1問。僕が今持っている問題集の最初の問題に出てきた単語です。5つの文から正しいものを選ぶもので、以下のように書かれていました。

「限定責任信託とは、信託事務処理において受託者が信託債権者と責任財産限定特約を締結する信託をいう」

これが正しいか、それとも間違っているか。正解は“間違っている”です。簡潔に言えば限定責任信託においては責任財産限定特約を結ぶ必要が無いということ。限定責任とか責任財産限定というのは、ぶっちゃけ同じようなもんなのです。責任財産限定特約はもうちょっと通りのいい名称を使えば、ノンリコース条項のことです。 ノンリコースローンについてWikipediaの文章をまるっと引用してみます。

この貸付方法による場合、借り手は債務全額の返済責任を負わない。責任財産からのキャッシュフローのみを返済原資とすること、その範囲を超えての返済義務を負わないことから、原則として保証人を必要としない。
(中略)
この融資は、銀行にとっては従来のように融資先の全資産価値を担保とすることができず、当該投資の成否そのものを判断しなければならないことから、銀行の審査能力が直接に試されることとなる。また、リスクに見合ったプレミアムの設定、スキームの形成についての技術能力など、銀行に総合的かつ高度な能力が必要とされることとなる。


例えば銀行が会社にお金を貸して、そのお金の投資に関する部分からしかお金を返してもらえないということです。投資がうまくいかなくても、会社の持ってる土地とかの資産を差し押さえたりしてはいけないのです。では限定責任信託ってのはどういうものか。それは信託法の第216条と第217条に書かれています。

(限定責任信託の要件)
第二百十六条  限定責任信託は、信託行為においてそのすべての信託財産責任負担債務について受託者が信託財産に属する財産のみをもってその履行の責任を負う旨の定めをし、第二百三十二条の定めるところにより登記をすることによって、限定責任信託としての効力を生ずる。

(固有財産に属する財産に対する強制執行等の制限)
第二百十七条  限定責任信託においては、信託財産責任負担債務(第二十一条第一項第八号に掲げる権利に係る債務を除く。)に係る債権に基づいて固有財産に属する財産に対し強制執行、仮差押え、仮処分若しくは担保権の実行若しくは競売又は国税滞納処分をすることはできない。 


まあ、だいたい責任財産限定特約(ノンリコース条項)と似たようなことが書かれていますね。でも、それだと一つの疑問が出てきます。同じような仕組みが二重で存在するのは無駄ではないかという疑問です。東大法学部の藤岡祐治さんが論説の中で以下のように述べていました。

(限定責任信託の)責任財産限定特約とのバランス
限定責任信託と異なり,当該信託債権以外は受託者の固有財産もその引当てになると考えられそうだが,21条2項4号における「信託債権」の範囲が問題となる。なぜなら,本号を広く解釈し,例えば信託債権を履行するに際して生じた不法行為債権がこの「信託債権」の範囲に含まれるとすると,限定責任信託とのバランスが悪くなるおそれがあるからである。すなわち,限定責任信託だと固有財産にかかっていけるものが,より簡易な責任財産限定特約を結ぶことにより,かかっていけなくなるという事態が妥当であるかということである。
(中略)
そのバランス上,原則としてその文言に忠実に,「信託債権」を広く解釈せず,少なくとも21条1項8号に該当しないものに限られると解すべきである。このように解すれば,限定責任信託とのアンバランスは生じないと考えられる。したがって,責任財産限定特約を結んだとしても,信託債権の履行に伴い生じる取引的不法行為や事実的不法行為は受託者の固有財産でも責任を負うこととなると考えられる。

つまり、 責任財産限定特約は限定責任信託を設定するよりも簡易で、その分適用範囲が狭まるということです。どちらを設定するかはケースバイケースで考えるべき、と理解しました。

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