2015年4月5日日曜日

税効果会計を整理してみる

今日の記事は「税効果会計」です。税効果会計は簿記1級の中でもけっこうややこしい部類に入るんじゃないでしょうか。仕訳を言われた通りに切ってみても、自分がいったい何をやっているのか分からない。そんな人は多いと思います。自分がそうだったもので^^; 今回は、混乱を生み出す大元を整理してみます。

混乱するポイントは以下にあると思います。

・繰延法と資産負債法の違いが分からない
・複数期間ではなく短期間で考えてしまっている

このポイントを念頭に置きつつ、以下を読んでいただきたい。

■繰延法と資産負債法

TACの教科書から、「税効果会計とは」で始まる一文を抜粋してみます。

税効果会計とは、企業会計上の「収益・費用」と法人税法上の「収益(益金という)・費用(損金という)」の認識時点の相違などで、企業会計上の「資産・負債」の額と法人税法上の「資産・負債」の額に相違がある場合、利益に関連する金額をもとに課税する法人税などの税金(「法人税等」)の額を適切に期間配分することにより、「法人税等」を「税引前当期純利益」に合理的に対応させるための手続きである。

初めて税効果会計を勉強するという人は、この文章だけでたじろいでしまうかもしれません。長いです。そして、分かりにくい。実は上の文で最初に理解すべき箇所は真ん中にあります。

企業会計上の「資産・負債」の額と法人税法上の「資産・負債」の額に相違(以下略)

税効果会計で真っ先に掴むべきはこの部分です。今の日本の会計基準上では、資産・負債における会計と税法の相違を元に税効果会計を行います。これを資産負債法と言います。そうではなく収益(益金)・費用(損金)について相違を計算する方法を繰延法と言います。しかしこの繰延法については、資産負債法によってカバーされています。だから究極的には繰延法とか知らなくても、資産負債法だけ理解していれば問題無いはずです。

しかしながら一般的に教科書では、繰延法、すなわち収益(益金)・費用(損金)の相違をまず最初に説明しています。その方が理解しやすい、というのが理由らしいです。しかしずっと繰延法を勉強してきたのに、後から資産負債法が出てくると受験生は「?」となってしまいます。なのでいっそのこと、最初から「税効果会計は損益計算書上のものと貸借対照表上のもの、2種類ある」と覚えてしまいましょう。

■税効果会計は将来を先取りするテクニック

税効果会計が難しいのは、それが今期に限った短期間ではなく、将来時点の会計につながる複数期間だというところにあります。具体的には、将来税金負担を少なくしてくれる繰延税金資産、将来税金を払わなくちゃいけない繰延税金負債の2種類です。

将来払うとか払わないとか言ってますが、こういった状況を生み出すのが一時差異です。そしてその一時差異というのが、会計と税法の相違です。例えば賞与引当金なんてのを考えてみましょう。賞与引当金とは、社員に支払うボーナスの積み立てのことです。なので支払いはまだ先になります。けれど賞与引当金を立てるということは、その期の費用が発生するということで、利益が下がります。実際にお金は減っていないけれど、会計上は損失が出ているということですね。しかし税法はこれを認めません。そんな風に利益を自由に下げることで、国に支払う税金を低く抑えられたら困るからです。ゆえにこれを損金不算入(費用として認めない)とし、ちゃんと税金を支払ってもらいます。しかししかし、これはこれで会社としては困ります。賞与引当金は立派な費用です。なのにより多く税金を持っていかれてしまうと、その期の業績を正確に表せなくなってしまいます。なのできちんと税法に則って税金を支払いつつ、会計上の表示を正確にするため、その差分を繰延税金資産として扱います。

今回損金不算入となってしまいましたが、これは実際に賞与を支払う段になれば解消します。支払う時は、会社は賞与引当金を取り崩すだけなので費用とならず、逆に税法ではお金を支払って損金算入とします。このように将来時点で解消する相違のことを、一時差異と言います。そして一時差異が発生するものについて税効果会計を適用するのです。ちなみに損益計算書での一時差異のことを期間差異、貸借対照表での一時差異を評価差額と言います。

■税効果会計の例(貸借対照表:評価差額)

評価差額を重点に置いた税効果会計の例を説明します。代表的なものがその他有価証券評価差額繰延ヘッジ損益ですが、比較的分かりやすいその他有価証券を例にします。と言ってもその他有価証券は他の金融資産に比べて処理が特殊で、これを理解するのもけっこうてこずります。それについてはまた別途書かせていただくこととします。

その他有価証券の価値が1,000円上がった、という仕訳を切ってみると、以下のようになります。税率は40%で計算しています。

勘定科目(借方) 金額(借方) 勘定科目(貸方) 金額(貸方)
その他有価証券 1,000 その他有価証券
評価差額金
600
繰延税金負債 400

回りくどいのもあれなので、最初から税効果会計を適用しておきました。その他有価証券は売買目的有価証券と違って、すぐに売って利益を得るようなものではありません。しかし満期保有目的債権のようにずっと持ち続けるものではなく、換金する可能性が十分にあります。どっちつかずで扱いが難しい。それがその他有価証券です。いつか売る可能性があるから、きちんと時価評価してあげます。しかし売らない可能性もあるので損益には入れません(部分純資産直入法の場合は損失を計上する)。なので基本的には貸借対照表の純資産を直接増減してあげるわけです。ただし、その増減はあくまで会計上のもので、税法上は認められません。よって税金分を繰延税金資産(負債)として計上し、税引き後の部分を評価差額とするわけです。

■税効果会計の例(損益計算書:期間差異)

ここまで来れば後は簡単です。次は期間差異について考えてみましょう。上記で賞与引当金を例としましたが、他には商品評価損なんかがあります。棚卸資産の会計処理で頻繁に出てくるあれです。売れ残った商品が劣化したとか言って損失を計上していますよね。しかし、それが本当かどうかは会社のみぞ知る。ひょっとしたら不当に損を計上することで、利益を低く計上しているかもしれません。税金はしっかり払ってもらわないと困るので、商品評価損でも損金算入が一部認められないことがあります。では損金不算入となった額を仮に1,000円(税率40%)としましょう。

勘定科目(借方) 金額(借方) 勘定科目(貸方) 金額(貸方)
繰延税金資産 400 法人税等調整額 400

繰延税金資産は貸借対照表資産の部に、法人税等調整額は損益計算書法人税の部に計上します。では次にこれが解消、つまり商品が実際に売れるなどして、評価損がきちんと税法上も認められた場合。損金算入となった場合の仕訳を見ます。

勘定科目(借方) 金額(借方) 勘定科目(貸方) 金額(貸方)
法人税等調整額 400 繰延税金資産 400

こんな風にひっくり返してあげれば良いわけです。

■まとめ

税効果会計について説明してきました。そもそも「効果」って何だよということで辞書を見てみると、「ある働きかけによって現れる、望ましい結果」とありました。つまり「税効果会計」というのは、会計処理によって望ましい結果、会計と税法の相違を吸収した状態を表すことなのだと言えるでしょう。(間違ってたらごめんなさい)

税効果会計を理解することはつまり、資産負債法期間差異評価差額の3つを理解することだと思います。教科書的に進めるとずっと期間差異だけを勉強することになって、資産負債法と評価差額が出てきた時に混乱してしまうかもしれません。当ブログが税効果会計理解の一助となれば嬉しく思います。分かりにくかったら、どのへんが分かりにくかったか教えてくれると助かります。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。